養蚕業は蚕(カイコ)を飼育しその繭から生糸(絹)を作る、かつては日本の主要産業でした。しかし、現在は高齢化や後継者不足により国産の生産量は大幅に減少。業界の存続が危惧される中、生繭として年間約1.5tにおよぶ全国屈指の生産量を誇る「アシザワ養蚕」は常識にとらわれない新しい挑戦を続けています。その代表を務める芦澤さんをご紹介します。

芦澤 洋平 アシザワ養蚕 山梨かいこ 蛹

芦澤 洋平(あしざわ ようへい)

1987年山梨県生まれ。150年続く歴史ある養蚕農家「アシザワ養蚕」の6代目。「いつの時代も社会に必要とされるお蚕を育てていく!」をモットーに衰退産業の養蚕業をお蚕や桑の新しい可能性を切り拓くべく、さまざまな活動をしている。

養蚕業の仕事が好きでたまらない

2017年に家業の「アシザワ養蚕」を継いだ芦澤さん。高校生くらいまでは家業が虫を大量に飼育している仕事であることが嫌で、一種のコンプレックスを感じていたといいます。世襲のプッシャーがなかったため、就職は生き物が好きだったことから動物園に就職。充実した日々を送っていました。

転機が訪れたのは働きはじめて2年ほど経過したある日のこと。当時の職場の先輩から養蚕業の希少さを教わったのがきっかけで、初めて家業を見直したと言います。

「家業は私しかできないという事。業種がとても珍しいこと。生き物の仕事である事。当時の私は経済的な要素は全く考えず、主にその三点で家業に帰る事を決意しました。」

芦澤さんが家業に戻る事を父親に告げると、逆に引き留めたられたそうです。養蚕業の大変さや将来性を考えたためだったかもしれません。しかし、養蚕業に関わっていくほどその魅力と可能性を感じ、養蚕業を中心に幅広い活動に取り組んでいくことになります。

「今では養蚕業の仕事が好きでたまらない」

芦澤さんは笑顔でそう語ります。

育てた蚕の蛹の品質を確認する芦澤さん

いつの時代も社会に必要とされるお蚕を育てていく

土地探しからのゼロから組み立て養蚕業を仕事として成り立たせることはそう簡単ではありません。その上、年々養蚕農家の数は減少の一途をたどり、現在では全国200軒を下回り、平均年齢が70歳台の業界に。そのような中、事業を受け継いだ芦澤さんは、桑畑が余るほどあり、設備も問題がない上、技術面でも口うるさいほどの指南役が隣にいたという状況は恵まれていたと言いいます。

「創業してから150年間のお蚕が作り出した繭で生計を立ててきました。それはある意味、お蚕の世代交代を何百回も繰り返し『生』を保ち続けてきた、とも言えるのではないでしょうか。」

芦澤さんはお蚕との関係を絶やしたくない、と言います。

「アシザワ養蚕が掲げている『いつの日も社会に必要とされる蚕を育てる』は、今後100年後も1000年後もお蚕と人が共に世代を乗り越えるための条件だと思っています。 」

養蚕業のこれからのために、お蚕が持つ無限の可能性と人間の新しい発想で産業の中で生き残りを図っていく必要がある、と語る芦澤さん。新規生産者のサポートや新しい活用を模索する取り組みを前のめりになって続けています。

芦澤 洋平 アシザワ養蚕 山梨かいこ 蛹
アシザワ養蚕で育てた蚕の蛹

食用としての蚕、約6,000年ぶりの原点回帰

TAKEOとの出会いは2019年。芦澤さんからお声がけをいただいたことがきっかけでした。

一般的に、養蚕農家は蛹ごと生繭を製糸会社へ出荷するため、サナギを扱うことはありません。しかし、近年、シルクたんぱくとして繭(シルク)を化粧品や食品として使用する需要が高まるなど新しい活用が増えています。芦澤さんの蚕蛹を見ると、まだ中身が乾燥されていない、フレッシュな生冷凍状態で保管できていたため、蚕蛹特有の匂いが薄く、中身もクリーム状で保たれており、食用には最適であることがわかりました。

「養蚕の起源はもともと絹糸を取るためではなく、食用としてお蚕を飼育したのが始まりらしいので約6,000年ぶりの原点回帰かもしれません。」

芦澤さんは「食品」として蚕蛹を販売したのは養蚕農家としてもおそらく初めてではないか、と言います。

TAKEOが開発した「山梨かいこ蛹 甲州みそ味」は、酸化防止剤や調味料などの添加物を使用せず、芦澤さんが大切に育てた蚕の風味を活かしながら独自の製法で仕上げた昆虫煮干しです。味をより楽しんでいただくために、同じ山梨県がルーツの五味醤油さんの「甲州やまごみそ」を使用。みそのやさしい香りが立ち昇り、噛みしめるとカイコの強いうまみとみそ味が染み出すのが特徴です。昆虫食としての蚕が商品化されことについて、芦澤さんはこう語っています。

「養蚕農家が初めて『食』の新しい分野でつながることができたのは、業界としても価値があることです。蚕が食用としての役割を果たし、社会の要求に応え続ける姿勢が養蚕業を絶やさないための一歩であると思います。」

養蚕業を未来へ紡いでいくー
TAKEOも芦澤さんのその思いに共感し、共に日本の養蚕業の振興に貢献していきたいと考えています。

山梨かいこ蛹・甲州みそ味

養蚕業は、所詮養蚕だけでは成り立たない生業で、蚕種や製糸・撚糸・織・・など。養蚕業は、所詮養蚕だけでは成り立たない生業で、蚕種や製糸・撚糸・織・・など。

580円(税込)
山梨かいこ蛹・甲州みそ味
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