豊かな昆虫食文化が残る長野県では、現在でも蜂の子、イナゴをはじめとする多様な昆虫を食用にしています。その中で、長野県南部・伊那谷に流れる天竜川で獲れる水生昆虫「ざざむし※」を食べる文化が危機に瀕していると言われています。今回は、その課題に取り組んだ長野県伊那市出身の大槻さんをご紹介します。
※ざざむしとは…カワゲラやトビゲラなど、川に棲む水生昆虫の幼虫を食用とする時の総称

大槻 海伶(おおつき みれい)

長野県伊那市出身、國學院大学まちづくり学科1年生。上伊那農業高校で学んだ昆虫食文化を活かしたまちづくりを伊那谷で実現するため、専門的な学習を深めています。また小学生から続けている大好きなソフトテニスでは、関東学生ソフトテニスリーグ優勝を目指して日々頑張っています! (写真右側)

「川の富をいただだきます」

大槻さんがざざむしに初めて出会ったのは小学校の給食でした。その時は特に深い思い入れもなく、友達とワイワイ騒ぎながら食べる地域の食材という認識だったとのことです。そんな大槻さんに転機が訪れたのは地元の上伊那農業高校で体験したざざむし漁での出来事でした。

ざざむし漁師さんが漁を終えたあと、川に向かって「川の富をいただきます。ありがとうございます」とお辞儀をしたのを見て、大槻さんはその姿に強く心が動かされました。この印象的な経験から「ざざむしの文化を未来へ残していきたい」と思うようになったと言います。

はじめは虫と聞いただけで嫌悪感を持っていた大槻さんですが、ざざむし漁体験や、河川環境の保全、養殖への挑戦など通じて、いつしかグロテスクな外観のざざむしにも愛着が湧いていったそうです。

同時に、地域の方々が川に感謝する心を持ち続け、ざざむしの捕りすぎを防ぐために漁業権を設定する鑑札(許可証)制度を取り入れたりして、循環していく豊かな自然環境を残し続けてきたからこそのざざむし文化だということを、改めて学んでいきます。

地元の漁師さんとざざむし漁をする様子
漁を終えた後に感謝をする姿

地域の伝統が途絶える危機

しかし、漁師の高齢化や河川環境の変化の影響で伊那谷にしかないざざむしを食べる文化は失われつつある現実がありました。

危機感を覚えた大槻さんは、上伊那農業高校コミュニティデザイン科グローカルコースの授業を通じて、ざざむしを活用した商品を開発することを決意します。

「この伝統が途絶えると自然と真剣に向き合う姿や感謝する心も同時に失われてしまう。文化をつないでいくためにも多くの人にざざむしと伊那谷の文化を知ってもらいたい。」

最初に挑戦したざざむしを活用したインスタント麺では、「信州ベンチャーコンテスト2020」高校生部門のグランプリを受賞しました。好評を博し、幸先の良いスタートでしたが、加工や製造面などの実現性で計画が頓挫してしまいました。試行錯誤を繰り返した末、行き着いたのが「ざざむしのふりかけ」案でした。

TAKEOとの出会いは、この時でした。

ボイル後のざざむし

TAKEOと共同開発で誕生した「ザザテイン」

「ざざむしだけではなく地域の食材を活用するのにこだわって、伊那谷産のくるみも入れることにしました。ざざむしにはたんぱく質が豊富に含まれるため、商品名はざざむし+プロテインで、ZAZATEIN(ザザテイン)です。」

中身の設計、パッケージデザインも大槻さんらが主体的に考えて進行しました。そんな商品のコンセプトは「ざざむしの目線で、ざざむしと暮らす未来を真剣に考えて作るふりかけ」です。

ざざむしの目線に立ち、ふりかけの中にざざむしが棲む環境を表現した、と言います。ざざむしの多くは川の中の石に隠れ、石についた苔などを食べて生活しています。粗挽きのくるみはそんな石を、川のりは苔を表現しているそうです。

旬の新鮮なざざむしを100%の使用。海苔のような香り高い風味が特徴です。

ざざむしふりかけ ZAZATEIN(ザザテイン)

長野県の地元の漁師さんと生徒たちが2021年冬に採集した、旬の新鮮なざざむしを100%の使用。旬のざざむしは脂がよく乗っていて、海苔のような香り高い風味が特徴です。
※ 約350個の数量限定生産ですぐに完売したため、現在は販売しておりません。また生徒たちがザザムシを獲ってくれたらぜひ再販したいと思います。

850円(税込)
ざざむしふりかけ  ZAZATEIN(ザザテイン)
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